[SFSジャーナル Smile Leaders]

#SmileLeaders 001
イアン・ソープ

金メダルより貴重なもの

October, 2010

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15歳で史上最年少でオーストラリア代表選手となって以来、数々の栄光を手にし、プールを沸かせた類まれなる天才スイマー、イアンソープ。彼の輝かしい実績を知らない日本人はおそらくほとんどいないだろう。だが、彼がスイムスーツを脱ぎ、“金メダルをとることより尊い”と信じて行っている活動を知っている人は少ないかもしれない。

偉大なるスイマーの出身国オーストラリア、いわゆる先進国と言われオリンピックも開催された大国に、彼が思いを寄せる地域がある。若くして世界を制したスイマーは、今ここで原住民アボリジニのコミュニテイのために奉仕活動をしている。オーストラリアの一般的な国民の生活とはかけ離れ、貧困や病気に苦しむアボリジニの子どもたちが教育を受けられるよう、10年ほど前、若干18歳にしてFountain For Youth というNPOを立ち上げた。

昨年7月にロンドンで開催されたBeyond Sport Summitで、ソープはその志についてスピーチの中でこう語っていた。

「世界中を飛び回る中で、世界にはいろいろな社会問題があり、貧困や紛争で苦しんでいる人々がたくさんいると知りました。そして、どうして僕の人生はこんなにいいことがたくさんあって、他の人の人生は、ただ運が悪かったというだけで、こんな苦しみを味わっているのか、と考えてしまったのです。でも僕は若くして、スポーツが国境や文化的イデオロギーや、政治や社会経済的に不利な立場も超える世界共通言語であることを垣間見てきた。」

彼の現在の活動の原点はここにある。そして、きっぱりとこう言い切った。

「今していることは金メダルより尊いと信じている」

何の迷いも意図もなく、確信と覚悟を持って。


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今年は9月末にシカゴで開催された同じ会議での彼への単独インタビューでは、さらにこう語ってくれた。

「たしかに、スポーツで実績を残すことはすばらしいことだと思います。人に感動も与えられる。でも、日々の生活に極度に苦しむ人たちとは次元が違うのです。僕にとっては、明日死んでしまう人がいたら、それを食い止めるのが先。僕はこれまで成し得た実績のおかげでそれを効率的に遂行できる立場にあるから、それを活用しようと思った。」

一方、グローバルスポーツ界でも昨今、スポーツを通した社会貢献、―いや、“貢献”というよりは社会“変革”―について頻繁に語られるようになってきており、スポーツの社会的な価値を世の中に生かしていこうという動きが、ますます活発になってきている、そんな中、今年4月にドバイで開催された世界スポーツ連盟の会合である SportAccord 2010の対談で、イアンがこんなことを言った。

「社会を変えていくには、スポーツ界だけではなく、ビジネス界、政界と協力し合っていくことが重要だと思います。」

最近の紙面やビジネスセミナーではよく語られるフレーズだが、オリンピック金メダリストもこういう発言をする時代になった。ソープはこの発言について、単独インタビューでこう付け加えてくれた。

「実際の世の中は“消費者の集団”と捉えられることが多いから、企業の動きに合わせて、政府が動く、というようなしくみになっているんだと思う。スポーツ界は、その企業と政府の情勢をみて、スポーツ界としてどういう貢献ができるかを考えることが重要。」

あの華麗なる実績を支えていたのは、技術力や精神力だけではなく、この高潔な志を生むマインドなのかもしれない。たとえ彼と同じような経験をし、匹敵する実績を成し得ても、こういう切り替えができるアスリートはなかなかいないだろう。アンドレ・アガシなど、献身的に社会貢献している大物アスリートは他にもいるが、この若さでここまでの信念を持ち、貫くというのは、まさに一流マインドの持ち主にしか成し得ない業だ。

アスリートの社会貢献を語るとき、よく議論に上がるトピックがある。それは、「社会貢献はアスリートにとって“義務”なのか“責任”なのか、あるいは“チャンス”なのか、ということだ。もちろん正解などなく、定義する必要もないのだが、イアンにとっては義務でも責任でもチャンスでもなく、ただ自然に望んだことの結果のようだ。なぜそんなに早く引退を…という世間の目など全く気にしないその凛々しさがかっこよかった。

今年のBeyond Sport Summit では、マイケルジョンソンとの対談だったが、ジョンソン氏が「人生の前半は勝負の人生だった。後半はパーソナルなゴールを達成するための人生にしたい。」と語ったとき、イアンも大きくうなずいていた。元一流アスリートたちがめざす、第二の人生のゴール。それは、雲の上の、一握りの人にしか目指せないものなどではなく、一般の人にも手が届く、メダルよりも貴重なものなのかもしれない。そう感じさせる頷きだった。

取材・文: 梶川三枝

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